今の男子フィギュアスケート界に流れている論争について、どうしてもメディアの対応が許せないから書く。

今のフィギュアスケートの採点方式は、高難易度である4回転ジャンプに対して加点が少なく、3回転と同じような扱いになっています。それならばハイリスクを伴う4回転は跳ばずに確実に点を稼げる3回転を決める方がいいという流れに変わった。そのような選手の向上心を奪い、そして現在4回転を跳ぶ選手に対しても高評価を得れないということに対し、プルシェンコは新採点方式に移行する段階からスケート連盟に対し物申してきた。実際に過去の著名なスケーターやコーチもこの採点方式に疑問符を投げかけてもいるし、4回転が無いのは男子ではないとも断言している人もいる、
でも、トリノ五輪後、益々男子フィギュア界で4回転を跳ぶ選手が減り、このままでは男子フィギュアが衰退してしまう、3回転ジャンプは女子の選手も当たり前のように跳んでいる。4回転に挑んだ選手もいた。(今は知らないです。)男子と女子とでは体の構成も体力も違う。それなのに4回転を跳ぼうとしない。否、跳べる環境ではないという現状に憂いたプルシェンコは3年のブランクを乗り越えて今回のバンクーバーを標準に競技世界に帰ってきた。
目的はひとつ、4回転の復活、そして男子フィギュアへの革新を齎すために。
実際、プルシェンコが競技世界に帰ってきた第1戦の国際大会であるロシア大会で彼は優勝を果たした。他の現役選手を差し置いて、彼は4回転を何度も決め、メディアの前で宣戦布告をした。この時に男子フィギュアの世界には4回転を跳ばなければオリンピックでは優勝できないという流れに変わった。何人もの選手が4回転に挑んだ。プルシェンコは次の国際大会であるユーロでも優勝した。4回転を跳ばなければ、という流れを持ち出し、オリンピックシーズンを盛り上げた功労者でもあるんです。高橋はそれに賛同し、小塚は触発され今回初めて成功させ、彼の自信と成長に繋がったともいわれてる。
プルシェンコ自身は、膝に半月板が無い、他にもたくさん爆弾を抱えている、更に過酷な手術やダイエットも乗り越え今銀盤の上に立っている。実際今回のオリンピックでは本調子ではなかった。直前の大会であるユーロの映像と比べても明らかに怪我の悪化が見てとれる。それでも彼は4回転を跳び続け、人々を魅了した。
それをメディアは挙ってヒールに仕立て上げて、敗北者が何を言うか、過去の人間が何を言うかといったバッシングの嵐になっているし、そのメディアを見た人もそう思ってしまっている現状にある。
確かにプルシェンコの行動は行きすぎていたと思う。ライサチェックとのいがみ合いは大人気ないとも思ったし、露骨に4回転ジャンパーを応援していた姿勢も余り好ましいとは思わない。でもそうしなければ、今のオリンピックシーズンでなければ誰も目を向けることはなかったと思うし、ここまで盛り上がることもなかった。そして、過去数年間のオリンピックや世界選手権・国際大会でメダルを独占し続け、フィギュアスケートの世界を引っ張り続けた孤高のチャンピオンであるプルシェンコでなければこの物議を醸し出すことはできなかったし、彼だからこそ出来たことでもある。
彼が本当に戦っていたのは、フィギュアスケートを取り巻く世界であり、システムの頂点にいる人間に対してであって、本当はただ、フィギュアスケートを愛し、行く末を案じての行動なだけで、ここまで叩かれる理由が私には見えない。何よりも、どっかのメディアがプルシェンコバンクーバー表彰式で高橋とがっつり両手で握手した後(これはきっと敬意を表してるのかな、自分に賛同してくれたこと、4回転へ挑み続けたことへの)1位の台を乗り越えて2位の場についたことを「踏みつけて」と表現してるアホがいることが許せんくて許せんくて。あれはプルシェンコのパフォーマンスだ。彼を知る人ならわかると思うけど、ユーモアに溢れ、且つ前回チャンピオンだった彼だから出来たことなだけで、別段嫌味とかそんなものは何もないと思うし、何よりも自分自身が一番よく分かっていると思う。
ランビエールの復帰も、きっとこのプルシェンコに触発され、賛同するためだと思う。後は忘れたものを取り戻すために帰ってきた。そんな中、プルシェンコ引退後4回転を跳び続け、フィギュア界を引っ張ってきたフランスのジュベールが本当にいたたまれない。彼の演技を見て、泣きそうになった。こんなんじゃない。彼の本領はこんなものではない。一人クワドを跳び続けたジュベールが大好きだ。まだまだ諦めないでほしい。

最後に、プルシェンコは偉大な、歴史に残るフィギュアスケート界の帝王だ。自分の経歴に傷をつけることを覚悟にこの世界に挑んできた。そして結果を残した。どれだけバッシングされても、きっと皆誰もがプルシェンコの演技を見たら魅了されると思う。そう信じてる。EXでは最高の演技を待ってます。
そして彼に敬意を表したい。帰ってきてくれて、ありがとう!