小松左京の「日本沈没」読みました。

日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)

日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)

日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2)

日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2)

島国日本、経済大国日本が沈む。なんてセンセーショナルな題材でそれを1970年代に発表しているということがまず凄いなと。東西冷戦時代、高度経済成長期で全てに於いて鰻登りな時代に日本が消滅するなんてことを考えることってあり得ないんじゃないかと思う。
初めは、アルマゲドンDay after tomorrowみたいなものかなと思ってました。最後は沈んでしまう点は救われないけれどね。でもそれは違うんだと読み進めるうちに気付かされた。沈むとなってからの日本政府の葛藤と諸外国の反応や日本国内の状況が余りにもリアリティに溢れているんだけど、その一方で改めて日本と言う国の持つ文化的価値や自然の姿のすばらしさを伝えようとしているのだと気付かされた。終章ので日本と言う国を龍に例えて沈みゆく様を描いている部分は悠久の時を持つこの国に対する作者の愛が溢れているなと思いました。日本は美しい。だから大切にしろ、と。
あと、途中で天変地異が多発し混乱に陥った民衆が暴徒と化し略奪や暴力行為をしているシーンがあったけど、それだけは多分日本では起こり得ないだろうなあと今の時代から見ると思う。当時はあれだよね、安保だとか学生運動だとかがあったからこんな描写になったんだろうなあと思った。そして、その時代を担いでいる人間も違うんだなと。70年代だと戦中戦後直後を生き抜いてきた人間が中心となり血眼になって日本の復興を成し遂げたときだからやはり気骨が違うのかなあと思う一方、ただの理想かもしれないと冷めた目で見てしまったり。今はその学生運動をしていた世代が中心だからね。なんかね。

ただのパニック小説ではなかった。SF小説でもなかった。
世界の中の日本について、もう一度考えさせられた。